〜トロイメライ Träumerei 6月号〜
第15回 シューマンはイケメン?
<< - 2010.06.01 - >>

6月8日に生まれたシューマン。今月はシューマンのお誕生月です。これまでシューマンの少年時代から作曲家として活動し始めるところまで話を進めてきましたが、今回は、彼がどんな風貌をしていたのか、どんな青年だったのかということをちょっとご紹介したいと思います。

シューマンの肖像画は少年時代から晩年まで比較的たくさんあるのですが、まずは16歳のこの絵から(左)。なかなかおしゃれでかわいい男の子です。シューマン少年はいわゆる美少年だったようで、周りの大人たちに可愛がられて育ちました。この時代にこのような肖像画を描いてもらえたことからも、ある程度家庭が裕福で大切に育てられたことが分かります。学校でもリーダー格の、明るく御茶目な少年でした。なかなかおませだったようで、10歳になる前にエミーリエ・ローレンツという少女に恋したこと、その後イーダ・シュテルツェルという少女との相思相愛の仲だったことが伝えられています。その後、10代のシューマンの日記にはナンニー・ペッチュ、リディ・ヘンペルという少女たちが恋の相手としてたびたび登場しています。

 

続いてこちらは青年時代のシューマン(右)。けっこうイケメンですね!シューマンの師の一人であったドルンは20歳のシューマンのことを「まるで絵にあるような美しい若者であった。青い瞳をほんの少し細め、笑うといつも頬にえくぼができた」と述べています。シューマン自身も、自分が女性に人気があるという自覚があったようで、惚れっぽく奔放な一面がありました。青年時代のシューマンの心をしばらく占めたのは年上の人妻、アグネス。ただしその間にも旅先で美しい女性にうつつを抜かすことはよくあったようです。このあたりから飲酒や喫煙も始め、毎晩のようにシャンパンを浴びるほど飲んだこともありました。


やがてピアノ教師ヴィーク(クララのお父さん)に師事し、ヴィーク家に下宿するようになりますが、同じ弟子であるエミーリエ・ライホルトに関心を寄せたり、ヴィーク家の女中クリステルと関係を持つなど相変わらずなかなかの発展家です。シューマンは後の妻となるヴィークの娘クララとも同じ屋根の下に暮らしていたわけですが、9歳年下のクララはまだシューマンの恋愛対象にはなりません。クララの当時の日記には「聖ミカエル祭から一緒に住んでいて、音楽の勉強をしているシューマンさん」と書き留められています。ただすでに天才少女ピアニストとして活躍していたクララにシューマンは尊敬と好ましさを感じており、クララのほうもハンサムで優しいお兄さんであるシューマンはお気に入りの存在でした。 やがてシューマンはヴィークの生徒エルネスティーネと交際を始め、母親に「彼女は金持ちボヘミアのフリッケン男爵の娘です。驚くほど純粋で、子供のように無邪気、上品で、思慮深くもあるのです。(中略)つまり、僕が理想の妻として臨む女性そのものなのです」と書き送ります。ほどなく2人は婚約。彼女との恋愛の過程で《謝肉祭》作品9という曲が生まれたことは以前このコラムでも触れました。

かなり女性関係が華やかだったシューマン。その後どのようにクララがシューマン中で存在を増していき、最愛の妻となっていくのでしょうか。来月以降お話ししたいと思います。

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