シューマンに関するコラム
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〜トロイメライ Träumerei 3月号〜
第24回 クララとの愛で生まれた傑作
  〜幻想曲 作品17〜

<< - 2011.3.1 - >>

ついに私の最も好きなピアノ曲の一つ、《幻想曲》を取り上げる時がきました!シューマンは1836年作曲の《ピアノ・ソナタ第3番》が完成した後、この曲を仕上げました。

ベートーヴェン(1770〜1827)

この作品は始めから「幻想曲」という題で書き始められたわけではありません。シューマンは当初、「フロレスタンとオイゼビウスによる大きなソナタ、ベートーヴェンの記念のためのオーボ−レン(小銀貨)」というタイトルを考えていました。リストが、ドイツのボン市にあるベートーヴェン記念碑建設のために寄付をしようと提唱し、シューマンもそれに賛同したのです。しかし、1836年に作曲に着手し、一応の形までは書き上げたものの、一方ではクララとの交際に関して絶望のどん底に打ちひしがれており、結局完成にこぎつけたのは1838年になってしまいました。当初のタイトルに「大きなソナタ」という言葉が入っていたように、「幻想曲」と言いながらこの曲は3楽章からなる、広い意味でのソナタとなっています。シューマンはもともと各楽章に「廃墟」、「凱旋門」、「星の冠」という副題をつけていましたが、完成時には削除され代わりに楽譜の冒頭にF.シュレーゲル(ドイツ、初期ロマン派の詩人、思想家)の詩の一節をモットーとして付けました。その詩は以下の通りです。

リスト(1811〜1886)

鳴りひびく全ての音を通してさまざまな大地の夢の中を一つの静かな音が聞こえるひそかに耳をすませている人のために

広くてぼんやりとした空間の中に一筋の光がすっと通るような、何やら謎めいた、暗示的な詩ですね。シューマンはなぜこの詩を曲のモットーとして掲げたのでしょうか。そして「一つの静かな音」とは何でしょう。これらのことを考えながら、次号はさらに《幻想曲》について深く探っていきます!

 
 
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