今月からはウィーンで見ることができる建築物や美術品についてお話ししたいと思います。ヨーロッパの主な都市は全てそうかもしれませんが、ウィーンは特に町全体がまるで生きた美術館。教会や宮殿などどれも目を奪われてしまうほど華麗で歴史を感じさせます。一方、ウィーンには素晴らしい美術館もたくさんあります。
まずは、ウィーンを訪れたら何が何でもとりあえず皆が行くであろうシェーンブルン宮殿。ハプスブルク家の歴代君主が夏の離宮として使用した宮殿です。シェーン(美しい)ブルン(泉)の名の通り、もとは清らかな水の湧く泉のそばに建てられた小さな宮殿でしたが、現在の姿に変えたのが女帝マリア・テレジアです。外壁の黄色がとても特徴的ですが、これは当初金色に塗ろうとしたところを、彼女が財政状況を考慮してこの色にしたとか。でも黄色にしたことで、かえって軽やかで優美な印象になっていますね。1400を超える部屋があり、じっくり見ようと思うととても一日では足りません。6歳のモーツァルトが始めて御前演奏をした場所でもあります。
マリア・テレジアの名前が出てきたところで、旧市街のマリア・テレジア広場にある美術史博物館をご紹介します。中央のマリア・テレジア像を挟んで、同じ形の美術史博物館と自然史博物館が向かい合わせで建っています(ちなみに自然史博物館はマリア・テレジアの夫、フランツ1世のコレクションが元になっています)。ウィーンで一つだけ美術館に行くなら迷わずここ。教科書やテレビ番組で見たことのある超名画が目白押しで、何度訪れても見応えがあります。こちらも真剣に見て行くととても一日では見きれませんが、美術史博物館を一つ見ただけで、他の美術展へ10個くらい出かけた気分になりますよ!
続いては再び宮殿。私の大好きなベルヴェデーレ宮殿です。ハプスブルク家に仕えたプリンツ・オイゲン公の夏の離宮だそうです。お天気の良い日に訪れると、まばゆくて、晴れやかで、本当に清々しい気持ちになります。建物ももちろん素晴らしいですが、宮殿の上宮はオーストリア絵画を展示した美術館(オーストリア・ギャラリー)になっています。泣く子も黙る超有名作、クリムトの「接吻」や、クリムトと同じく近代オーストリアを代表するシーレやココシュカの作品が並びます。美術史博物館に展示されている絵画は、中世やバロックなど古い時代のものが中心ですが、オーストリア・ギャラリーに世紀末ウィーンのなんとも馥郁とした香りを感じさせる作品が多く、この街の持つもう一つの魅力を再認識させてくれます。
それでは来月は、その濃密な世紀末ウィーン芸術を見ていこうと思います!